前夜

ロシアがウクライナへの侵攻が24日に始まってから、

すでに4日経過した。

経過したと思っている。

 

25日の朝は開戦のショックが大きくて、

目覚めとともに空襲警報の幻聴が聞こえた。

ある朝、これまでも暮らしをすべて捨てて、国から逃げるか、

武器を取って戦わなければならなかったら、どうする・・・。

 

今は、2月28日。情勢がまた動き出そうとしている。

 

始めは無実のウクライナ市民が無慈悲なロシア軍に侵略を受けているように

感じられたが、今はいろいろな側面を感じるようになってきた。

 

ロシア国内のニュースを見ていると、国民はプーチンが始めた侵略戦争

支持していない。

逮捕されることもいとわずに反戦デモをする民衆が25日から見られた。

今ではデモに参加して逮捕された国民の数は3000人にも上っている。

 

ロシア軍の士気も低い。

中には、訓練だと聞かされて参加したのに、いつの間にか前線で戦うことになった

若いロシア兵が捕虜となり、尋問に対して「自分も戦争なんて望んでいない」と回答する様子がTwitterのタイムラインに流れてくる。

 

ロシアの国民の中では、高齢者層と若年層でジェネレーションギャップが生じており、

若い世代ほど厭戦ムードが漂っているらしい。

なぜこのような世代間の断層が生じているかというと、

高齢者はロシア政府のプロパガンダが中心のテレビ番組を視聴していることが多いかららしい。

対して若年層はSNSを利用するなどして、外部の情報を積極的に閲覧することで、

客観的なニュースを閲覧している。

そのため、ロシア政府は国内のSNSを制限するなど規制を強めている。

 

ウクライナのゼレンスキー大統領は、敵国でもあるロシアでデモを始めた人々に、

Twitter上でこう呼びかけた。

街頭で抗議しているロシア市民の皆さん、私たちにはあなた方の姿が見えている。あなた方にも私たちの声が届いているはずだ。力を貸してほしい。戦争に反対してほしい」

 

日本のテレビなどでは、プーチン大統領歴史修正主義に傾倒しているのではないか、

という仮説が報じられている。

 

ロシア政府は、ウクライナの東部ではロシア人がジェノサイドを受けており、人道的解放のためにロシア軍を派兵していることや、

ウクライナNATOへ加盟することでロシアの安全保障的な部分で危機的状況にあることを今回の侵攻に至った動機として発表している。

 

しかし、客観的に考えると、ロシアと隣接しているバルト三国はすでにNATO

加盟済みであり、今更ウクライナが加盟したところで、危機的状況が大きく変わるわけではない。

また、ウクライナでジェノサイドが行われていることは客観的に証明できておらず、

また、ウクライナ全土を侵攻したことで、結局ウクライナに住むロシア人も

現在危機的状況に陥っており、人道的解放にはつながっていない。

 

今回の戦争は、この不可解さも含め、刻一刻と変わる情勢が

逐一SNSにアップされることがこれまでの戦争と大きく違う点だと思った。

 

情報戦の様相をすでに呈している。

これは仕方のないことなのだけれど、ロシアへの嫌悪感情が増大している。

EU加盟国やアメリカ、そして日本が経済制裁を下すまでは、

私はウクライナをなんとか助けてあげてほしい、と感じていた。

ウクライナ軍はロシア軍と比べて規模も小さいし、

物量戦で考えれば勝敗は決まっていたからだ。

だが、たった4日で経済制裁の大枠が決まったところを見ると、

これは民主主義と帝国主義との代理戦争で、

ある意味冷戦時代の巻き戻しなのかもしれないと思った。

これは不気味な話である。

 

一時はこのまま第三次世界大戦に突入するのかとも思われたが、

各国は自国の軍は派兵せず、あくまでも武器の供与や難民の保護という形で

協力しており、戦火は広がっていない。

 

初めて飛行機が空中分解して、燃え散る様子を見た。

それは、非情にも美しく思えた。

 

キエフの上空では、いくつもの戦闘機が飛び交っていたのだろう。

これから、ベラルーシの国境で停戦協定が行われるらしい。

ベラルーシは、ロシアの傀儡政権とも呼ばれているので、

ウクライナにとって不利な停戦協定が持ち込まれる可能性もある。

 

どちらにせよ、ロシアはこれから厳しい経済制裁に耐えなければならない。

反戦デモを掲げたロシアの市民たちがどうか報われてほしいと感じる。